「視聴をスキップ」から「視聴をクリック」への新しい挑戦

Miho Horinouchi
Miho Horinouchi
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テクノロジーの爆発的な進化によって、テレビ・新聞によるマス型アプローチが中心だった広告も大きく変わり、私たちは日々個々のユーザーに向けて高度にパーソナライズされたデジタル広告に囲まれて生活している。そんな中で、扱えるデータ量が増え、また安価になったことで可能になった広告の一つがオンライン上での動画広告である。

 

YouTubeなどの動画プラットフォームでお目当ての動画を見ようとしていたら、突然の動画広告が始まるのは、多くの読者にとって馴染みのある経験だと思う。しかし、このように’’強制的に’’見せられる動画広告において、動画を最後まで見てもらえる事は実に少ない。「広告をスキップ」「視聴をスキップ」というオプトアウトのボタンがある事で、強制的に視聴されたユーザーは途中で離脱する事も多い。

 

広告において大事なことは、ユーザーにポジティブな態度変容を起こさせる事である。せっかく作った動画広告が、ユーザーにいら立ちを与える事になってはならない。

 

そこで新しく開発されたのが、ユーザー自らが見たい動画広告を選択し視聴する、新しいフォーマットの動画広告である。

テクノロジー先進国であるイスラエルにて行われた、以下のような事例がある。

 

世界最大の食品・飲料会社ネスレが、同社商品「Petit Buerre」のキャンペーンにおいて、同商品を材料とした様々な料理のショットによる49秒の動画を作成した。これは動画全体の視聴に長い時間を要する、俗にいう長尺動画であり、広告主としては最後まで視聴してもらう事に重きを置いているタイプの動画である。(反対に短尺動画は、5秒程度の短い時間で、ユーザーが離脱もしくは視聴完了する事を広告主が見越して作る動画である)

 

ネスレはこのような長尺の動画広告を活用するため、大手新聞社などのオンラインサイトにおける記事下にウィジェットを設置し、ユーザー自らが動画を選択して視聴する事ができる新しい配信サービス、アウトブレイン ジャパン株式会社が提供する’’FOCUS(フォーカス)’’を採用。「スキップされる動画」ではなく「選んでもらう(クリック)動画」として、この動画広告を配信した。

 

▼(FOCUSのウィジェット例)動画の再生ボタンをクリックすることで初めて再生。興味をもったユーザーのみが主体的に視聴する。

その結果ネスレは、選択視聴型の同プラットフォームを使う事で、これまで利用していた大手プラットフォームと比較して約2倍の数値となる48%の視聴完了率と、平均視聴時間35秒という非常に高い結果を残した。クリックしたユーザーの半数は美味しそうなお菓子の動画に興味を持ち、途中でスキップする理由を見つけられないまま、最後まで視聴したわけである。

 

▼ネスレの動画とキャンペーン結果

長尺動画を最後まで視聴してもらえることで、広告主にとってエンゲージメントを高めると同時に、ブランドの持つストーリーテラーにもなってもらう事ができる。

 

そこでもう一つ紹介したい例は、イギリスの製薬会社である「グラクソ・スミスクライン」の事例である。知覚過敏症用のシュミテクトの機能を伝えるため、世界で最も冷たい街を舞台とした1分間の動画を配信した。

その結果、やはり全体の半数である49%のユーザーが完全視聴し、平均視聴時間は37秒となった。ユーザーは世界のどこかにある冷たい街でシュミテクトの歯磨き粉が生み出す価値を、1分間という長尺だからこそ、一つのストーリーとして十分理解することができる。

 

▼シュミテクトのキャンペーン例

 

24時間365日、情報過多の世界にいる私たちにとって、強制される情報をこれ以上受け入れる寛容さはもう残されていない。

選択視聴型の動画広告は、そのような課題を解く新たなフォーマットである。

 

Miho Horinouchi

Miho Horinouchi

アウトブレインジャパン株式会社 マーケティングマネージャー