2025年の広告トレンドと戦略
2025年は、広告業界にとって挑戦の年となるでしょう。
AIが業界を揺るがし、アテンション持続時間はさらに短かくなり、信頼は低下し、データプライバシーへの懸念が高まっています。
とはいえ、もちろん悪いことばかりではありません。広告業界の新たなトレンドをしっかり把握することで、競合他社に優位性を示すことができます。
この記事では、2025年の広告戦略に不可欠な10のトップトレンドについて徹底分析していきます。
広告トレンドの重要ポイント:
- 従来のSNSはあまり使われなくなり、また生成型AIにより信頼が損なわれています。広告主はこれに対抗するために、信頼性と人間的なつながりに重点を置く必要に迫られています。ユーザー生成コンテンツとマイクロインフルエンサーキャンペーンは、ブランドに人間味をプラスする効果があります。
- 引き続きショート動画が主流です。短い縦型動画を広告、製品デモなどに活用できます。
- B2C需要創出への移行は2025年も続きます。手順には、ユーザーの把握、フォーカスを絞ったコンテンツの作成、ファネルの作成、継続的なエンゲージメント、ネイティブ広告の使用が含まれます。
- プライバシー規制によりサードパーティCookieが制限されているため、広告主は高品質のコンテンツでユーザーエンゲージメントを獲得することに重点を置く必要があります。この場合、ファーストパーティのデータ収集とAIツールがターゲティングに役立ちます。
- オムニチャネルマーケティングは、プラットフォーム間で一貫したカスタマー ジャーニーを作成します。顧客体験を統合し、情報を一元化し、ユーザー生成コンテンツで信頼を築き、自動化ツールを使用することで変化に適応します。
- 広告主は、バナーブラインドネスを克服するためにこれまで以上に努力し、視聴者の価値観と関心に合わせた広告戦略に重点を置きましょう。動画コンテンツ、特に Click-to-Watchフォーマット広告は、より強い感情的なつながりを生み出し、視聴者を積極的に引き付けることで、バナーブラインドネスの克服に役立ちます。
- AR や VR などの体験型マーケティングは、ブランドを差別化し、新たなアプローチを提供するのに役立ちます。
- 音声検索は、特に Web 検索での AI エンジンの使用増加により成長し、広告主の SEO戦略に影響を与えることになるでしょう。
2025年の広告トレンド
1. AIによるSNSの信頼性低下
まず最初に取り上げるべき課題は生成AIです。
ここ数年、SNSプラットフォームで目にするものに対するユーザーの信頼が徐々に低下しています。
OutbrainとSavantaの調査によると、約21%の人々がSNSの利用を減らす予定で、75%がSNS広告を信頼していないことが分かりました。これは編集された出版物と共に表示される広告と比較すると顕著です。
同時に、「AI広告」の検索が急増しています。
生成AIツールの登場により、SNSへの不信感が高まっているという証拠もあります。Hootsuiteの「Social Media Trends 2024」レポートによると、AIツールによって作成されたコンテンツの疑いを感じた場合、62%の人々がそのコンテンツを信頼しないと報告しています。
特に高齢層はAIツールやコンテンツと関わることが少ない傾向にあります。ターゲットユーザーの人口統計や興味関心を理解することが重要です。60歳以上のユーザーをターゲットの場合、AIツールを重視したマーケティングはあまり効果がないかもしれません。
2. トレンドは「本物」の広告
次に考えるべき課題は、広告に対する信頼が低下している中で、広告主は何をすべきかということです。
2023年、Merriam-Webster氏は「authentic(本物)」をその年の言葉として選びました。
つまり、もっと「本物」であることが求められています。
しかし実際には、広告の世界はそれほど単純ではありません。
本物であることの鍵は、人間味を感じさせるブランドの側面を見せることです。企業ロゴばかりを強調し、人間味のあるコンテンツを共有しないブランドは、遅れを取る可能性があります。
2025年の最大の広告トレンドは、本物の人間味を見せることです。
さまざまなタイプの、人間によって生成されたコンテンツを試してみることがブランドにとって重要です。
- 社会変革を促進する投稿や広告(コミュニティプロジェクト、持続可能性)
- 人間味のあるストーリー(個人的なカスタマージャーニー、ケーススタディ)
- 現実的なコンテンツ(洗練されすぎた動画を避け、フィルターがかけられていない生のコンテンツを選択する)
- ユーザー参加の促進(ユーザーが語り、ユーザー生成コンテンツ(UGC)の提供を許可する)
これらすべてのコンテンツタイプは、特にネイティブ コンテンツまたはコンテキスト広告として表示される場合、より本格的な広告キャンペーンを作り上げます。
この広告トレンドは、オンライン専業家具会社「Article」のウェブサイトで明確に確認することができます。Articleは、ユーザーが自社の家具をどのように使っているか、写真を追加・共有するよう促しています。これにより、同社の製品に「本物」の生命が吹き込まれるのです。
マイクロインフルエンサー(10k〜100kのフォロワーを持つ人々)とのコラボレーションも、信頼できる生の声をブランドマーケティングキャンペーンの一部とするための強力な手法です。
例えば、イギリスのスーパーマーケットチェーン「Iceland」の例を挙げましょう。同社は、ユーザーによる支持率が過去最低の10%を記録するという問題に直面していました。
同社はそれまで、大物有名人に頼った広告を制作していましたが、何か違うことをしようと決め、フードインフルエンサーとコラボレーションし、有名人ではなくマイクロインフルエンサーに移行しました。このユーザー生成コンテンツの増加は、ネイティブ広告やコンテキスト広告を通じてシェアされ、その結果キャンペーンは大成功を収め、支持率はたった1年で70%に急上昇したのです!
3. ショート形式動画の圧倒的な力
過去数年で、ショート動画が爆発的に流行したことは誰もがご存知でしょう。このトレンドは、TikTokやInstagram Reels、Outbrain Moments、YouTube Shortsなどのプラットフォームがリードしています。
ショート動画は、製品デモやストーリーテリング、ユーザーの声、舞台裏を紹介するコンテンツなど、非常に多くの用途に活用することができ、ユーザーアテンションを獲得するのに最適です。
マーケティング担当者の39%は、30秒から60秒のビデオがエンゲージメントに最適だと述べています。
Moments by Outbrain は、人気の広告トレンドである縦型動画のコンセプトを、信頼できるメディアサイトに導入したもので、従来のソーシャルメディアチャンネル以外でアテンションを獲得するのに最適です。
前のセクションでお話した、スキンケアキャンペーンを例としてあげましょう。冒頭で「オフィスのエアコンが肌に悪影響を与えているかも?60秒でできる解決方法をご紹介!」というようなショート動画を作成するのもいいでしょう。
目的は、ユーザーに問題を素早く解決する方法を示すことや、何らか形で楽しませることです。ビデオはものすごく洗練されている必要はありません。ユーザーは本物かつ「リアル」なコンテンツを好みます。適切な照明、クリアな音声、縦型フォーマットを使用すれば、完璧です!
4. B2Cにおける需要創出
B2C はかつて、ハングリーマーケティング戦略を使ったメッセージの発信がすべてでした。しかし時代は変わり、もはやユーザーに広告を見せるだけでは十分ではなくなりました。
2025年には、B2C 製品を販売するためにもっと努力する必要があるといえます。単に需要を満たすのではなく、実際に需要を生み出す必要があります。言い換えれば、ユーザーに貴社製品が必要であることを認識させる必要があります。
需要創出は従来、B2B の領域でしたが、B2C マーケティング担当者にも採用され始めています。これは 2025 年を通じて続く広告トレンドです。
B2C マーケティングで需要を生み出すための基本的な手順について説明しましょう。
1. ターゲットオーディエンスを徹底的に理解する
ユーザーが何に悩んでいるのかを知り、何を心配しているのかを理解しましょう。どのようなソリューションを提供できるのでしょうか?例えば、スキンケア会社であれば、ターゲット市場のほとんどがオフィスワーカーであることに気づき、エアコンの効いたオフィスで肌が乾燥するのを防ぐ方法についてのアドバイスを提供することができるでしょう。
2. 焦点を絞ったコンテンツを作成する
ユーザーの共感を呼ぶブログ記事や動画、インタラクティブイベントを作成しましょう。先程の例に続けてお話します。「エアコンの効いたオフィスで肌の乾燥を防ぐ 5 つの簡単な方法」というタイトルのブログ記事を書いたり、オフィスワーカー向けの健康的なスキンケアルーティンを紹介する動画を作成したりすることができます。
3. ファネルアプローチを活用する
マーケティング ファネルを通じて、認知 (アッパーファネル)、検討 (ミドルファネル)、そして最後に決定 (ローワーファネル) という段階を踏んでユーザーを誘導する際に、各段階において異なるコンテンツを提供します。スキンケア会社のキャンペーンでは、次のようなコンテンツの活用が考えられます。
- アッパーファネル:「オフィスのエアコンが肌をにダメージを与える理由 (およびその対処法)」と、ニュースレター購読を申し込むための CTA (行動喚起)
- ミドルファネル:「究極のオフィススキンケアキット: あらゆる肌タイプの方の必須アイテム」と、初回購入者向けの割引コードをダウンロードするための CTA
- ローワーファネル:リターゲティング広告、顧客レビューの共有、およびユーザー生成コンテンツ (UGC) から、「今すぐ購入」ボタンのあるランディングページに移動
4. 継続的なエンゲージメント
エンゲージメントとは、ユーザーが迷惑に感じない程度に存在をアピールし続けることです。これは、Eメールリマインダー、パーソナライズされたオファー、ボットでもスパムでもない人間味を感じるリターゲティング広告などが活用できます。
5. Outbrainを活用してリーチを拡大する
Outbrain のネイティブ広告は、アッパーおよびミドルファネルのコンテンツに最適です。他の関連コンテンツと一緒に、信頼できるサイトでコンテンツを共有するために使うことができます。例えば、スキンケア会社が自社広告をファッションサイトのブログコンテンツにさりげなく掲載することができます。
6. コンバージョン戦略
誰かが貴社のサイトを訪問したり、コンテンツに関心を持ったりしたら、そのユーザーの興味関心に合わせた広告を表示できます。たとえば、「あなたはこの商品に興味があるようです。購入の準備はできましたか?」というように、製品を購入するよう優しく促すことができます。Google、Outbrain、ソーシャル メディアなどのプラットフォームの活用が可能です。
5. Cookieのない未来への対応
ほとんどの専門家が、デジタル広告におけるデータ管理が厳しくなっていることに同意しています。プライバシー法は世界中で強化されていて、サードパーティクッキーは廃止の方向にあるようです。
MicrosoftとMozillaは、すでにブラウザのデフォルト設定でサードパーティクッキーを禁止しています。Googleは2024年にクッキーを廃止する計画を延期しましたが、将来的にそうなることを否定していません。
クッキーのない未来は広告主にとって何を意味するのでしょうか?
それは、サードパーティのデータへの過度の依存を手放すことを意味します。その代わりに、高品質のコンテンツを作成し、クリエイティブなアイデアで人々を魅了するという基本に立ち戻ることになるでしょう。
しかし、データのすべてが失われたわけではありません。ブランドは、ウェブサイトやアプリ、その他のタッチポイントを通じて、直接データを収集することが可能です。
そこで便利なのがAIツールです。サードパーティのクッキーがなくなれば、扱うデータは減るかもしれませんが、AIはデータパターンを見つけるのが得意です。人間が見つけられないようなデータの洞察を手に入れるのに役立ちます。
ファーストパーティデータとAIツールをフル活用することで、以前と同じようにコンテンツや広告のターゲットを効果的に絞り込むことができます。
6. オムニチャネルを目指す
オムニチャネルマーケティングは以前から存在していましたが、多くの企業はまだ採用していません。
オムニチャネルは一貫性がすべてです。
ユーザーはシームレスな体験を期待しています。ウェブサイトを訪問するときも、アプリをチェックするときも、店舗に入るときも、その過程が統一されていると感じるようにすべきであり、そうでなければ信頼を失い始めてしまいます。
成功するオムニチャネル体験を生み出す方法を以下にまとめました。
- 顧客体験を統一する: SNS、広告、メール、オフラインなど、あらゆる場所でブランディング、メッセージング、UX が一貫していることを確認しましょう。
- 情報を一元管理する: あちこちにキャンペーンが散らばっていると、ユーザーはそれを 1つの連続性のある体験ではなく、別のブランドを扱っているように感じてしまうでしょう。
- UGCで信頼を築く: 人々はブランドよりも口コミを信頼します。ユーザーに自社製品について投稿してもらい、さまざまなチャネルで共有してもらうことができれば、信頼性が高まります。
- 変化に適応する: 最新の自動化ツールとテクノロジーを使用して、コアメッセージはそのままに、さまざまなチャネルに合わせてコンテンツを微調整してフォーマットします。たとえば、データを分析して即座に調整するツールがあり、ユーザーがアプリでカートを放棄した場合、パーソナライズされたオファーが記載されたメールが届いたり、翌日にリターゲティング広告が表示されたりします。
7. バナーブラインドネスを克服する
従来のディスプレイ広告でユーザーアテンションを獲得するのは困難です。バナーブラインドネスは現実に起こっていて、エンゲージメント率を下げています。
バナーブラインドネスを克服するための主戦略は、ターゲットオーディエンスの価値観や興味関心に合った広告を作成することです。広告が自分や自分の立場に語りかけていると感じれば、アテンションを獲得する可能性が高くなります。
ほとんどの人は、毎週約 7 時間ビデオをストリーミングしています。これは、動画が強い感情的なつながりを生み出すことを示しています。つまり、このエンゲージメントの可能性を最大化するには、価値主導のストーリーを伝える動画や広告カルーセルが確実な手段です。
クリックして視聴する動画広告のアイデアはシンプルで、非常に効果的です。動画を自動再生するのではなく、ユーザーが視聴する動画を選択できるようにしましょう。ひとたびユーザーが動画を選べば、よりエンゲージメントが高まります。
8. 体験型マーケティング
ユーザーは非日常的な体験を望んでいます。そのため、体験型および没入型のマーケティングイベントは今年人気が高まるでしょう。
没入型体験を作成する方法のひとつとして、拡張現実 (AR) または VR を使用することがあります。たとえば、ワーナーブラザーズは 2023 年に映画「バービー」の宣伝のために、没入型のAIドリブンな「セルフィージェネレーター」を活用しました。ユーザーは特別なウェブサイトにアクセスすることで、バービー人形のカバーにセルフィーを使うことができました。これにより、子供も大人も「バービーの世界」の一部になったような気分になりました。
別の会社、ベネフィットコスメティックスは、マグネットマスカラ シリーズを宣伝するキャンペーンを作成しました。ユーザーはプラットフォームにサインインし、位置情報を共有して、携帯電話を使用して自分の物理的な空間でトークンを探すという内容です。これは、美容製品用のポケモンGOともいえるもので、トークンは割引や無料のマスカラ、仮想美容相談と交換できます。
9. マイクロインフルエンサーマーケティングの台頭
2023年には、64%のインフルエンサーマーケターがマイクロインフルエンサーとコラボレーションしました。
マイクロインフルエンサーとは、1万~10万人のフォロワーと、緊密かつ反応の良いコミュニティを持つ人たちです。彼らはより親しみやすく、より「リアル」に感じられるため、関連ブランドの宣伝に最適です。
一般的にインフルエンサーマーケティングは、今日最もROIの高いチャネルの1つであり、2025年もその傾向が続くと考えられます。Instagram、Facebook、YouTube、Pinterestなどの大手ソーシャルプラットフォームでマイクロインフルエンサーを探しましょう。
1,000~10,000人のフォロワーを持つナノインフルエンサーも、特にニッチな製品やサービスでは優れたROIを実現することができます。
10. 音声検索
2022年には、アメリカ人のほぼ半数、英国とドイツの3分の1人以上が、音声検索テクノロジーを使用してバイヤージャーニーを開始しました。
これはSEOに違いをもたらします。音声検索はより会話的であり、ユーザーは「近くの最高のコーヒーショップ」と入力するのではなく、「フィラデルフィアのフィッシュタウンで一番のコーヒーはどこですか?」、あるいは単に「ケチャップの染み取り」と入力する代わりに、「ケトマトチャップの染みを落とすにはどうしたらよいですか?」など、完全な質問をします。
音声検索に関するデータはそれほど多く存在しないため、「リバースエンジニアリング 」する必要があります。有料検索キャンペーンを利用して、音声検索から来る可能性のあるロングテールクエリを追跡するためのブロードマッチ修飾子を作成し、それに基づいてSEO戦略を立てることはおすすめの方法です。
新たな広告トレンドを今すぐ取り入れよう!
特にオンラインマーケティングでは、テクノロジーの変化の速度に圧倒されたり、取り残されるのではないかという恐怖を感じることがあるかもしれません。
しかし、心配する必要はありませんし、始めるのに遅すぎることはありません。
時代の流れに乗り、新しい戦略やツールを導入し始めると、成功への道筋が見えてくるでしょう。
最後に、広告トレンドの3つのポイントをご紹介します。
- AI パーソナライゼーションを活用する:AIツールを活用して、広告キャンペーンを適切なユーザーにアピールしましょう。AI はユーザーデータを調べ、特定の関心やニーズを特定することができます。
- オムニチャネルアプローチを採用する:ウェブサイト、SNS、実店舗、広告チャネルなど、すべてのプラットフォームで一貫性を確保しましょう。これにより、信頼と主体性が構築されます。
- 動画コンテンツに重点を置く:アテンション獲得のために、ショート動画を活用しましょう。ブランドのストーリーを伝える、価値観に沿ったclick-to-watch動画広告が効果的です。単に商品を販売するだけでなく、つながりを構築することを目指しましょう。
